介護における接遇とは? 利用者と信頼関係を築く基本マナー5原則とポイント

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介護における接遇とは? 利用者と信頼関係を築く基本マナー5原則とポイント

介護の現場では、専門的な知識や技術だけでなく利用者への対応の仕方も重要です。しかし、多くの介護職員は日々の業務に追われ、接遇を学ぶ機会がありません。この記事では介護現場での接遇の基本や必要な理由、マナーを解説します。記事を読めば介護での接遇のコツがわかり、利用者との関係や職場環境の改善に役立ちます。

介護現場における接遇の基本は、相手の立場に立った考えや行動です。挨拶や身だしなみなどの基本的なマナーだけでなく、利用者の尊厳を大切にしましょう。
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接遇とは丁寧な対応やおもてなしのこと

接遇について、以下の項目を解説します。

  • 接遇の重要性
  • 接遇と接客の違い

接遇の重要性

介護現場での接遇の重要性は以下のとおりです。

  • 利用者の満足度と生活の質の向上
  • 事業所の評価とイメージ向上
  • 専門職としての信頼性の向上
  • 良好な人間関係の形成
  • ストレス軽減とトラブル防止
  • 職員のモチベーション向上
  • 他の事業所との差別化

接遇と接客の違い

接遇と接客の違いは、以下のとおりです。

接遇
接遇とは「おもてなしの心」を大切にし、相手の気持ちや状況に寄り添った態度や振る舞いをする、思いやりのある対応を指します。接遇には言葉遣いや表情、態度、身だしなみなどが含まれます。接遇は相手の満足感の充足や心地よさの提供が目的です。接遇は医療や福祉、ホテル業など幅広い分野で重視されます。
接客
接客は小売業や飲食業などで使用される、商品やサービスを提供する行為です。ビジネス要素が強く、商品やサービスの販売が目的です。

介護では単なるサービス提供ではなく、相手の気持ちを第一に考える心の通った対応が欠かせません。介護現場では「接客」よりも「接遇」が求められます。
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接遇が介護現場で求められる理由

接遇が介護現場で求められる理由は、以下のとおりです。

  • 利用者の尊厳を守るため
  • 利用者や家族との信頼関係を築くため
  • 職場環境を良好に保つため

利用者の尊厳を守るため

介護施設を利用する一人ひとりには人格と個性があり、権利を尊重する必要があります。介護現場で適切な接遇を心がけると利用者の自尊心が守られ、生活の質も向上します。介護保険法や障害者総合支援法でも、利用者の尊厳の保持は基本理念です。

利用者の尊厳を守るには、丁寧な言葉遣いや態度を意識しましょう。介護施設の利用者の意思決定と自己決定権を尊重し、プライバシーも配慮してください。職員による過度な親切や必要以上の干渉は、利用者の尊厳を損なう可能性があります。

利用者や家族との信頼関係を築くため

利用者や家族との信頼関係の構築は、質の高い介護に欠かせません。接遇によって利用者や家族との信頼関係を構築するポイントは、以下のとおりです。

  • 約束を守る
  • 定期的に報告する
  • 介護の負担に共感する
  • 的確なアドバイスをする
  • 要望をしっかり聴く

適切な接遇で利用者や家族と信頼関係を構築できると、より良いケアができます。不安や心配を抱えている利用者や家族には真摯に向き合い、丁寧に対応して安心感を与えましょう。安心感があると利用者や家族は満足度が高まるだけでなく、本音を話しやすくなります。

家族からの情報には利用者の生活や好みなど、貴重な内容が含まれます。家族との関係が良好だと、スムーズな情報共有が可能です。信頼関係が築けていれば、緊急時やトラブル発生時も、利用者や家族と協力できます。多くの利用者や家族と信頼関係が構築されていれば、施設や事業所の評判も向上します。

職場環境を良好に保つため

介護職員の接遇が適切に行われていれば、以下の点で職場が良好に保たれます。

  • チームワークの向上
  • コミュニケーションの円滑化
  • 介護職員同士の信頼関係の向上
  • 離職率の低下
  • 問題解決の円滑化
  • 業務効率の向上
  • 組織全体の士気向上

職員同士の関係が良好だと、利用者も安心できます。新人職員にとっても、先輩職員の接遇は重要です。日々の業務で先輩職員から適切な接遇を学べると、新人職員も適切な知識が身に付きます。

介護職の接遇マナー5原則

介護職の接遇マナーについて以下の5原則を解説します。

  • 挨拶
  • 身だしなみ
  • 言葉遣い
  • 表情
  • 態度

挨拶

挨拶は介護現場の接遇の基本です。職員の挨拶が明るく元気だと、利用者の気持ちも明るくなり、安心感を与えられます。利用者に挨拶するときは、以下のポイントを意識しましょう。

  • 利用者の名前を呼ぶ
  • 目を見て話しかける
  • 時間帯に合わせた言葉を使う
  • 笑顔で明るく声をかける

接遇は「おはようございます」「こんにちは」などの基本的な挨拶でも大切です。認知症の利用者にも挨拶し、尊重していることを伝えましょう。挨拶は繰り返すと、接遇の習慣として自然に身に付きます。利用者の体調や状況に配慮しつつ、丁寧な挨拶を心がけてください。

身だしなみ

介護現場で身だしなみを整えておくと、安心感や信頼につながります。清潔感のある身だしなみを保つために、以下のポイントを心がけましょう。

服装
清潔な服装は、感染予防の観点からも重要です。ユニフォームは正しく着用し、名札は見やすい位置につけましょう。
長い髪はまとめると、介護中に職員の髪が利用者に触れず、衛生的です。
爪を短く切ると、利用者を傷つけるリスクを減らせます。マニキュアや派手なアクセサリーは控えましょう。
その他
靴は清潔で動きやすいものを選び、マスクは正しく着用してください。笑顔や表情が見えるよう、顔まわりも整えましょう。

身だしなみに気をつけると利用者に不快感を与えず、介護職員としての責任を果たせます。

言葉遣い

介護現場での言葉遣いは、敬語の使い分けや命令口調を使わないことが重要です。言葉遣いが適切だと利用者は尊厳が守られていると感じ、安心できます。接遇マナーとしてわかりやすく、肯定的で丁寧な言葉を使いましょう。利用者を呼ぶときは「〇〇さん」をつけてください。相手の状況や気持ちに配慮した言葉選びが重要です。

利用者に対して「恐れ入りますが」「よろしければ」などのクッション言葉を使うと、丁寧な印象になります。方言や若者言葉は使わず、標準語で話すと利用者が話しやすくなります。高齢の利用者には聞き取りやすいようにはっきりと、大声にはならない音量で話しかけてください。

表情

介護職員は業務に集中していると、いつの間にか表情が硬くなる場合があります。利用者は介護職員の表情からさまざまな情報を感じ取るため、笑顔で接することが大切です。介護職員は表情をコントロールし、緊張や不安を感じている利用者には、柔らかな表情で接しましょう。

表情は重要な非言語コミュニケーションで、介護職員の専門的なケアと同じように利用者の心に届きます。

態度

接遇マナーとして介護現場での適切な態度は、以下のとおりです。

  • 常に相手を尊重する
  • 落ち着いている
  • 話を遮らない
  • 利用者のペースに合わせる
  • 適切な距離感を図る
  • 公平・平等な対応を守る
  • 威圧的にならない
  • 利用者の自己決定を尊重する

話すときの姿勢は背筋を伸ばし、利用者の方へ体を向けるようにすると、関心があることが伝わります。介護職員は利用者に対して不快感を与えないように、柔軟な対応ができると理想的です。職員が急かさず焦らず対応すると、利用者は安心して介護を受けられます。

介護現場での接遇のポイント

介護現場での接遇のポイントは、以下のとおりです。

  • 目線の高さを利用者に合わせる
  • 傾聴の姿勢を持つ
  • 職員同士の会話に注意する

目線の高さを利用者に合わせる

利用者と目線の高さを合わせて話すことは、介護の接遇の基本です。車いすやベッドを利用している人に話しかける際は、かがんで目線を合わせましょう。利用者と目線を合わせると対等な関係性を示せ、利用者の尊厳を守れます。介護職員が利用者に対して上から話しかける姿勢になると、威圧感や不快感を感じます。

利用者を介助する場合は介護職員が座って話すと利用者の表情や反応がわかり、落ち着いた雰囲気での会話が可能です。認知症の利用者の場合は安心感を与えるために、介護職員が目線を合わせることは欠かせません。高齢者は首の可動域が限られる場合も多いため、視野に介護職員が入るよう配慮してください。

利用者と目線を合わせる際は、適切な距離感(パーソナルスペース)を保ちましょう。介護職員は利用者をよく観察し、体調や気分の変化に気づけるよう目線を合わせると、良質なケアができます。介護職員は、利用者一人ひとりの状況に合わせた目線合わせを心がけましょう。

傾聴の姿勢を持つ

傾聴とは利用者の話に真剣に耳を傾け、理解しようとする姿勢のことです。利用者の話を傾聴する際は以下のポイントが大切です。

  • 話を最後まで遮らない
  • うなずき、相づちを打つ
  • 利用者の目を見る
  • 表情や身振りから読み取る
  • 重要な情報をメモする
  • 自分の考えを押し付けない
  • 相手が話し終わってから質問する

傾聴では、利用者を理解しようとする気持ちが重要です。利用者の言葉の奥にある思いや感情を汲み取る姿勢が、より良いケアにつながります。介護職員が話をきちんと聞いてくれることで、利用者も安心できます。

職員同士の会話に注意する

介護現場では利用者を中心とした接遇が求められるため、職員間のコミュニケーションにも注意が必要です。利用者の前での職員同士の会話は、不安感や疎外感を与える可能性があります。専門用語や略語を使った職員同士の会話は、利用者に誤解や不安を与える可能性があります。

職員間の私語や業務連絡は利用者の前では行わず、利用者についての情報共有は個室などで行いましょう。職員間の連絡は筆談やメモ、申し送りノートを使うと、他の利用者のプライバシーを守れます。利用者の前で職員同士の会話が必要な場合は利用者へ断りを入れるか、理解できるように話しましょう。

介護の接遇のスキルを高める方法

介護の接遇のスキルを高める方法は以下のとおりです。

  • 接遇研修を受ける
  • 定期的に自己評価する
  • フィードバックをもらう

接遇研修を受ける

接遇研修には外部研修と内部研修の2種類があり、両方を組み合わせると効果的です。接遇の外部研修では幅広い知識や最新のトレンドを学べ、接遇の内部研修では施設の特性に合わせた内容を学べます。最近ではオンライン研修も増えており、介護職員は時間や場所を選ばずに接遇研修を受講できます。

接遇研修のメリットは以下のとおりです。

  • 専門講師からの指導を受けられる
  • ロールプレイを通じて実践力が身に付く
  • 自身の課題や改善点に気づける
  • スタッフ間で接遇の共通認識が生まれる
  • マニュアルの活用方法が明確になる

接遇研修では、専門的な知識と実践的なスキルを体系的に学べます。研修後は学んだ内容を職場で共有し、日々の業務で接遇を意識的に実践しましょう。振り返りと実践を繰り返すと、接遇が身に付きます。

定期的に自己評価する

自分自身の接遇の対応を定期的に振り返ると、問題点が見えてきます。客観的に接遇を自己評価するには、チェックリストが効果的です。接遇のチェックリストには、以下の項目を含めましょう。

  • 挨拶と笑顔ができているか
  • 適切な言葉遣いができているか
  • 身だしなみが清潔に保てているか
  • 利用者と目線を合わせられているか
  • 傾聴の姿勢は良いか

週に1度や月に1度など、定期的に接遇を振り返る習慣を身に付けましょう。印象に残った利用者とのやり取りを思い出し、良かった点と改善点を書き出すことも有効です。緊張していたときや忙しかったときの利用者への対応は、丁寧に振り返ってください。

客観的に自分の接遇を評価するには利用者の許可を得て、自分の接遇を録音・録画すると効果的です。記録をすると、自分では気づかない癖や表情が見える場合があります。自己評価で自分の接遇の強みと弱みを明らかにし、弱点を改善する行動計画を立てましょう。

振り返った後は「今月は笑顔を増やす」「敬語の使い方を直す」など、具体的な接遇の目標を設定すると成長できます。同僚の接遇を観察すると、自分にはない視点や技術を学べます。成長記録をつけると自分の接遇の変化を実感できて、モチベーション維持にも有効です。

フィードバックをもらう

上司や同僚から定期的に接遇のフィードバックをもらうと、自分では気づかない接遇の癖や改善点がわかります。利用者や家族からの接遇のフィードバックは、介護を直接受ける側の意見として真摯に受け止めましょう。フィードバックを受ける際は改善点を具体的に挙げてもらい、自分の接遇を評価してもらうと効果的です。

接遇は複数の人から意見をもらい、フィードバックの記録をつけましょう。フィードバックを受けた後は、接遇の改善策を考え実践します。改善策を実践したら、再度フィードバックをもらい、継続的に接遇を改善する姿勢が重要です。

接遇のフィードバックをくれた人には、感謝の気持ちを必ず伝えてください。

まとめ

介護現場の接遇は利用者の尊厳を守り、信頼関係を築くための基本です。接遇が適切だと、介護の質も高まります。介護現場の接遇では挨拶や身だしなみ、言葉遣い、表情、態度の5つが基本原則です。接遇を実践するときは目線の高さを利用者に合わせ、しっかり利用者の話を聴きましょう。

利用者がいる前での職員同士の会話は、不安感を与えるため注意してください。接遇を向上させるためには、専門的な研修や定期的な自己評価が効果的です。他の職員からの接遇のフィードバックも役立ちます。適切な接遇は、利用者の心に寄り添うケアや介護職としての成長に欠かせません。

日々の業務の中で意識して接遇に取り組み、より良い介護を提供しましょう。