介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違いとは?働き方と特徴を解説

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介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違いとは?働き方と特徴を解説

介護の現場で働く中で「介護老人福祉施設」と「介護老人保健施設」の違いが曖昧なまま働いている方も多いのではないでしょうか。転職を考えるうえで、介護老人福祉施設と介護老人保健施設の役割や働き方の違いを理解することは大切です。

この記事では、介護職として働く方向けに、介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違いを解説します。記事を読めば、転職先として介護老人福祉施設と介護老人保健施設のどちらが自分に合っているかを見極められます。

介護老人福祉施設は生活の場として長期入居を前提とする施設である一方、介護老人保健施設はリハビリを提供する中間施設です。各施設の特徴を理解し、自分に合った職場を見つけましょう。

介護老人福祉施設での働き方と職場の特徴

介護老人福祉施設(特養)での働き方と職場の特徴について、以下の項目に分けて解説します。

  • 介護老人福祉施設の役割
  • 入居条件と利用者の特徴
  • 業務内容と提供サービス
  • 施設の居室タイプと設備

介護老人福祉施設の役割

治療を行う医療機関とは異なり「暮らしの支援」が介護老人福祉施設の役割です。介護老人福祉施設は、家庭での介護が困難になった高齢者を受け入れ、生活の場を提供します。利用者の食事や入浴、排泄などの日常生活をサポートしつつ、心身の安定や尊厳の保持を目指します。

介護職の仕事は利用者の身体介護だけではありません。利用者の表情や声にならない訴えに気づき、細やかな気配りを重ねて信頼関係を築く力が介護職に求められます。

入居条件と利用者の特徴

介護老人福祉施設の入居対象は、原則として要介護3以上の認定を受けた方です。身体的・認知的に中度から重度の介護が必要で、自宅での生活が困難な高齢者が介護老人福祉施設を利用します。介護老人福祉施設は「終の棲家」としての役割もあり、利用者は数年間生活します。

認知症の方も多いため、介護職には高齢者特有の症状や行動に理解をもって対応する力が必要です。

業務内容と提供サービス

介護老人福祉施設での介護職の主な業務内容は、利用者の日常生活を支えることです。介護職の主な業務内容と提供サービスは以下のとおりです。

  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • 移乗・移動の補助
  • 就寝準備
  • レクリエーション活動
  • 季節行事の企画・運営
  • 看取りケア
  • 家族との連携
  • 医療職との協働

上記のように、介護職員として幅広いケアを担当できることが介護老人福祉施設の特徴です。介護職の経験を積みながら、ケアマネジャーや生活相談員など、専門職を目指す道も開かれます。
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施設の居室タイプと設備

介護老人福祉施設の居室は従来の4人部屋に加え、近年ではユニット型個室が増えています。ユニット型では利用者が10人前後の少人数グループで生活を送り、居室は完全個室です。ユニット型個室では個人のプライバシーを尊重しつつ、家庭的な雰囲気の中でケアを提供できます。

介護老人福祉施設内には以下の設備が設けられており、介護職は状況に応じたケアを提供します。

  • 食堂
  • 浴室(特殊浴槽含む)
  • 機能訓練室
  • レクリエーションスペース
  • 医務室

介護老人福祉施設は全館バリアフリー設計となっており、車椅子や歩行器の利用者にも配慮されています。

介護老人保健施設での働き方と職場の特徴

介護老人保健施設(老健)での働き方と職場の特徴について、以下の項目に分けて解説します。

  • 介護老人保健施設の役割
  • 入居条件と利用者の特徴
  • 業務内容と提供サービス
  • 施設の居室タイプと設備

介護老人保健施設の役割

介護老人保健施設は在宅復帰を目的とした中間施設であり、医療と介護の両面から利用者を支援する役割を持っています。治療後に在宅生活へ戻ることが難しい利用者が、一定期間滞在して心身の機能回復を目指す場所が、介護老人保健施設です。

介護老人保健施設には、医師や看護師、リハビリスタッフが常駐しています。医学的な管理のもとで介護とリハビリを一体的に提供しており、利用者の自立に向けた回復支援において、介護職の役割は重要です。

生活を支えるだけではなく、利用者が「できることを増やす」ためのサポートを日々実践することが介護老人保健施設の役割です。

入居条件と利用者の特徴

介護老人保健施設に入所できる人は、要介護1以上の認定を受けた高齢者です。介護老人福祉施設が要介護3以上であるのに対し、老健は要介護1から幅広く高齢者を受け入れています。利用者は、病気やけがによる入院を経て、退院後のリハビリや生活訓練を必要とする人が中心です。

介護老人保健施設は終身利用を前提とした施設ではなく、3~6か月程度の中期利用が一般的です。利用者には認知症の方や複数の疾患を持つ高齢者も多く、医療的な観察力や状況判断が介護職に求められます。

介護老人保健施設は、疾患管理の理解や緊急時対応のスキルなど、医療寄りの知識を身に付けやすい職場です。退所後の生活を見据えた支援が求められるため、利用者本人だけでなく、家族への情報提供や介護指導に携わる場面もあります。

業務内容と提供サービス

介護老人保健施設での介護職の主な業務は、日常生活支援に加えて、リハビリの補助や生活動作訓練のサポートです。食事や排泄・入浴などの基本的な身体介護を行う点は介護老人福祉施設と共通していますが、主な目的は「自立支援」です。

食事介助では可能な限り利用者の自力摂取を促したり、トイレ誘導では歩行訓練を意識して関わったりします。介護老人保健施設ではリハビリスタッフと連携しながら、訓練プログラムの実施をサポートする場面も多くあります。

介護老人保健施設での介護職に求められるのは、介助ではなく訓練の目的や進捗を理解したうえで利用者と関わることです。介護老人保健施設では以下の役割も介護職が担う場合があるため、より広い視野で支援する力が必要です。

  • 退所支援
  • 家族との面談
  • 自宅での生活環境の確認・助言

施設の居室タイプと設備

介護老人保健施設の居室は従来型の多床室が多い一方で、プライバシーに配慮した個室やユニット型個室の導入が進んでいます。多床室では1部屋に2〜4名の利用者が同居しているため、介護職は複数の方の状態を同時に把握しながら効率的なケアが可能です。

一方、ユニット型ではより個別性の高いケアが可能となり、家庭的な雰囲気の中での支援が提供されます。介護老人保健施設内には、以下の設備が完備されています。

  • リハビリ室
  • 訓練用の設備
  • 医務室
  • 特殊浴槽
  • 歩行訓練用の設備

日常的にリハビリや医療行為が行われるため、介護職も訓練機器の扱いや医療職との連携の重要性を理解して働く必要があります。介護老人保健施設では医療やリハビリ・生活支援に幅広く関われます。

介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違い

介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違いを、以下の項目に沿って解説します。

  • 役割と目的の違い
  • 入居条件の違い
  • 提供されるサービス内容の違い
  • 居室タイプと設備の違い
  • 費用の違い
  • 在籍する職員の違い

役割と目的の違い

介護老人福祉施設の主な役割は「生活の場」の提供です。「終の棲家」として位置づけられており、長期入居を前提とした利用者の日常生活を最後まで支援します。

一方、介護老人保健施設は「在宅復帰を目指すリハビリの場」です。病院と自宅の間に位置する中間施設として、原則3か月〜1年程度の利用を想定しています。介護老人保健施設の主な目的はリハビリによる機能回復です。

介護老人福祉施設と介護老人保健施設では、運営主体も異なります。介護老人福祉施設は社会福祉法人、介護老人保健施設は医療法人が運営主体となるケースが多く見られます。

入居条件の違い

介護老人福祉施設は、原則として要介護3〜5の重度の介護が必要な高齢者を対象としています。一方、介護老人保健施設は要介護1〜5のすべての要介護者が入居対象です。介護老人福祉施設と介護老人保健施設では、入居期間にも大きな違いがあります。介護老人福祉施設は終身入所が基本で、入居期間に制限はありません。

介護老人保健施設は、3〜6か月程度の短期・中期入所が想定されています。介護老人福祉施設と介護老人保健施設では対応できる状態にも違いがあります。介護老人保健施設は医師や看護師が常駐しているため、医療的ケアが必要な方の受け入れ体制が整っています。

提供されるサービス内容の違い

介護老人福祉施設では、日常生活全般にわたる介護サービスが24時間体制で提供されています。介護老人福祉施設で提供されている具体的なサービス内容は、以下のとおりです。

  • 食事や入浴、排泄などの基本的な生活支援
  • レクリエーションや生活支援のプログラム
  • 終末期ケアや看取り
  • 長期的な生活の場

介護老人保健施設では、医学にもとづいた介護とリハビリが中心となります。介護老人保健施設の主なサービス内容は以下のとおりです。

  • 専門的なリハビリプログラム
  • 在宅復帰を目指した生活機能訓練
  • 退院後のケアプラン作成
  • 定期的な健康チェックや医療処置

介護老人福祉施設は「生活の場」の提供を役割としている一方で、介護老人保健施設はリハビリや医療ケアに重点を置いています。

居室タイプと設備の違い

介護老人福祉施設では、従来は多床室(4人部屋)が主流でしたが、近年は個室・ユニット型の施設が増加傾向にあります。特に、ユニットケアでは10人程度の小規模な環境を提供しており、より生活感のある空間づくりが意識されています。長期滞在を前提としているため、収納スペースが充実している点も見逃せません。

介護老人保健施設も多床室と個室の両方を備えています。介護老人保健施設は、リハビリや医療的ケアを提供する施設です。リハビリ機器や訓練室、機能回復訓練設備、医療機器、緊急時対応設備などが充実しています。

費用の違い

介護老人福祉施設の月額費用は一般的に10〜15万円程度です。一方、介護老人保健施設は10〜18万円程度となり、医療サービスが充実している分、若干高額になります。介護老人福祉施設も介護老人保健施設も介護保険からの給付があり、自己負担は1〜3割です。

加算料金については、リハビリや特別なケアに対する加算が介護老人保健施設の方が多い傾向にあります。介護老人福祉施設は長期利用が前提のため、入所一時金は原則不要です。介護老人保健施設でも入居一時金は原則不要です。

在籍する職員の違い

介護老人福祉施設では、主に以下の職員が在籍しています。

  • 介護職員
  • 生活相談員
  • 介護支援専門員
  • 看護師
  • 機能訓練指導員
  • 管理栄養士
  • 医師

一方、介護老人保健施設には以下の職員が在籍しています。

  • 医師
  • 看護師
  • 介護職員
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 支援相談員
  • 介護支援専門員
  • 栄養士

両施設の職員配置の最も大きな違いは医療・リハビリ体制です。介護老人保健施設では常勤医師の配置が義務付けられていますが、介護老人福祉施設では非常勤医師でも可能です。

介護老人福祉施設と介護老人保健施設の選び方

転職を考えている介護職にとって、介護老人福祉施設と介護老人保健施設のどちらを選ぶかは今後のキャリア形成に影響します。転職者が希望する業務内容に応じて、介護老人福祉施設と介護老人保健施設のどちらがおすすめの職場かを解説します。

長期的に関わる介護をしたい場合は介護老人福祉施設

利用者とじっくり向き合い、長期的な関係を築きながら介護をしたい方には介護老人福祉施設が適しています。利用者の生活を理解しながら、介護を通じて信頼関係を築きながら支援できる点は、介護老人福祉施設ならではの魅力です。

介護老人福祉施設は人と深く関わる介護にやりがいを感じる方や、利用者の人生に寄り添いたいという思いを持つ方に適しています。

介護の幅広いスキルを身に付けたい場合は介護老人福祉施設

介護職としてのスキルを総合的に伸ばしたい方に向いている職場が介護老人福祉施設です。介護老人福祉施設では、利用者の日常生活に関する多くの業務を経験できるため、介護の幅広いスキルが自然に身に付きます。介護老人福祉施設では、多職種との連携が日常的に行われており、チームケアの実践や学習が可能です。

介護老人福祉施設には以下のポジションも用意されているため、キャリアアップも十分に目指せます。

  • ユニットリーダー
  • 介護主任
  • 生活相談員

医療処置に関わりたい場合は介護老人保健施設

医療的なケアに興味があり、看護師や医師と連携しながら働きたい方には介護老人保健施設が適しています。介護老人保健施設では、介護老人福祉施設に比べて医療処置が日常的に行われており、以下の医療に関わる場面が多くなります。

  • 点滴管理
  • 経管栄養
  • 褥瘡ケアなど

介護老人保健施設では医療処置に関われるため、将来的に医療寄りのキャリアを目指す際に役立つ知見を得られます。介護老人保健施設は病院勤務と在宅介護の中間的な立ち位置にあるため、医療ケアと生活支援をバランス良く学べる現場です。
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リハビリ支援に関わりたい場合は介護老人保健施設

利用者の自立支援や在宅復帰をサポートしたい方には、介護老人保健施設がおすすめです。介護老人保健施設では理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が在籍し、利用者のリハビリが積極的に行われています。

リハビリの補助や生活訓練のサポートを行う立場として、リハビリスタッフと密に連携することが介護老人保健施設での仕事です。食事介助の際に嚥下機能を意識した声かけなど、リハビリの延長線上にあるケアが求められます。

リハビリ中心の環境で働くことで、介護職は身体機能や生活動作の改善に携わるやりがいを感じられます。

まとめ

介護老人福祉施設と介護老人保健施設は異なる目的と役割を持つ介護施設であり、働く環境や求められるスキルにも違いがあります。介護老人福祉施設は、利用者の生活に長期的に寄り添いながら支援する施設です。看取りや家族対応なども含め、幅広いケアスキルを磨きたい方に適しています。

介護老人保健施設は在宅復帰を目的とした中間施設です。医師やリハビリ職と連携しながら、介護老人保健施設は医学的ケアや自立支援に携われる場でもあります。介護老人保健施設は回復支援や医療的処置の機会も多く、キャリアアップを目指す方にとって魅力的な選択肢です。

今の職場に物足りなさを感じている介護職の方は、自分が目指したい働き方に合わせて転職する施設を選びましょう。