介護士の給料は本当に上がる?上がる背景と収入アップの具体的な方法を解説

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介護士の給料は本当に上がる?上がる背景と収入アップの具体的な方法を解説

介護士の給料が上がるのか不安に思う人は多くいます。国は介護職員の処遇改善に取り組んでいますが、厳しい経済状況に直面している人が多いです。この記事では、2024年の介護報酬改定や政府の賃上げ政策、介護士の給料を上げる方法を解説します。

記事を読めば、介護士の給料の動向が理解でき、自身の収入を増やす方法がわかります。介護士の給料は、資格取得やキャリアアップによって大きく増やすことが可能です。職場選びや働き方の工夫によっても、高い給与を得られる可能性があります。

介護士の給料に関する動向

介護士の給料に関する動向を、以下の項目に分けて解説します。

  • 2024年介護報酬改定の影響
  • 介護職員向け賃上げ政策の概要

2024年介護報酬改定の影響

2024年4月に実施された、介護報酬改定による最も大きな影響は、介護職員の賃金アップです。介護報酬全体で+1.59%(介護職員の処遇改善分が+0.98%、その他の改定率が+0.61%)の賃金改定となりました。政府は処遇改善加算を拡充し、介護職員の月額賃金が平均1万円上昇しました。

小規模事業所向けの加算の強化により、処遇改善加算の取得が進みにくかった事業所でも加算を取得しやすくなりました。介護現場の生産性向上を図るため、ICTやテクノロジー活用への加算も新設されました。

介護職員向け賃上げ政策の概要

介護職員の賃上げは、深刻化する人材不足の解消と、介護サービスの安定的な提供に不可欠です。国は介護職員の処遇改善に継続的に取り組んでおり、2024年4月の介護報酬改定において政策が大きく強化されました。

福祉・介護職員処遇改善加算など3つの加算が1本化・再編され、「福祉・介護職員等処遇改善加算」が新設されました。福祉・介護職員等処遇改善加算は、事業所が取得し、介護職員の賃金改善に充てることを目的としています。政府は福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果として、以下の賃上げを目指しています。

  • 令和6年度にベースアップ等で2.5%相当
  • 令和7年度にさらに2.0%相当

介護職の給料が上がる背景

介護職の給料が上がる背景について、以下の項目ごとに詳しく解説します。

  • 介護職の人材不足
  • 高齢化社会への対応

介護職の人材不足

日本の介護職の有効求人倍率は、全職種平均の2倍以上で高水準を維持しているのが現状です。高い有効求人倍率は、介護士の求人に対して応募が極端に少ない現状を反映しています。就職後に定着しない問題もあり、介護職の年間離職率は約10%と、若い世代の早期離職が目立ちます。

介護職の専門性や負担に見合わない報酬のため、働く人々はモチベーション維持や生活設計が困難です。介護職は身体的・精神的負担が大きい点も無視できない要素となります。介護職のキャリアパスの不透明さも、離職につながる理由の一つです。

介護施設の約7割が、介護士の人材不足を経営課題として挙げています。既存スタッフの業務負担が増加し、サービスの質の低下や新規利用者の受入制限などの問題が発生している状態です。
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高齢化社会への対応

日本の高齢化は急速に進んでおり、介護サービスの需要が大きく増加しています。2025年には団塊世代がすべて75歳以上となり、介護需要がピークを迎える見込みです。2040年には高齢者人口がピークに達し、同時に生産年齢人口が減少する深刻な状況に直面します。

2040年にピークに達した高齢者人口に対応するため、政府は地域包括ケアシステムの構築を積極的に推進しています。地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で暮らしを続けられるよう、医療や介護、住まいなどを提供する体制です。

政府は介護人材の確保を国家的な優先課題と認識しており、以下の対策を推進しています。

  • 介護現場のICT化や介護ロボットの導入
  • 外国人介護人材の受入の拡大
  • 介護予防と健康寿命の延伸
  • 家族介護者への支援

介護士の給料が低いと言われる理由

介護士の給料が低いと言われる理由は、以下のとおりです。

  • 介護報酬に上限があるから
  • 専門性が認知されていないから

介護報酬に上限があるから

介護サービスは公的保険制度にもとづいて運営されているため、提供できるサービスの報酬には上限が設けられています。介護報酬は3年ごとに改定されますが、国の財政状況を考えると大幅な増額は難しい状況です。介護施設の運営者は、介護報酬の範囲内で以下の費用をすべて賄わなければなりません。

  • 職員の人件費
  • 施設の運営費
  • 設備の維持管理費
  • その他の必要経費

介護報酬の約7割が人件費に充てられているため、報酬の上限が給与の上限に直結します。介護サービスの利用者の負担も考慮する必要があるため、報酬単価を簡単に上げられない制度的な制約も存在します。自治体による助成金や補助金は一時的な場合が多く、恒常的な給与アップにつながりにくいのが現状です。
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専門性が認知されていないから

介護士の給料が低い理由として、専門性が社会的に十分認知されていない点が挙げられます。介護士の専門性が正当に評価されない背景には、以下の問題があります。

  • 国家資格の資格手当が少ない
  • 介護の質を数値化できない
  • 専門的スキルの評価体系が未確立である
  • 専門性を認識する機会が少ない

介護士の仕事は高度な知識や技術が必要な業務であるにも関わらず、社会的ステータスは低く見られがちです。ドラマやニュースなどでは、介護の大変さは強調されても、専門職としての側面が十分に伝えられません。

介護士のキャリアパスや技術向上の道筋が見えにくく、専門職としての魅力が伝わりづらい状況が続いています。

介護士の給料を上げる方法

介護士の給料を上げるには、以下の方法があります。

  • 夜勤を増やす
  • 資格を取得する
  • キャリアアップを目指す
  • 高収入の職場へ転職する

夜勤を増やす

夜勤手当は基本給とは別に支給されるため、月収を大幅に増やせる可能性があります。夜勤手当は1回当たり4,000~1万円が相場です。月8回程度の夜勤で、3~8万円もの収入アップが見込めます。

施設によって夜勤手当の金額は異なりますが、老人ホームや特別養護老人ホームでは夜勤手当が高い傾向です。夜勤専従の働き方を選ぶと、高い夜勤手当に加えて特別手当が設けられている場合もあります。

資格を取得する

介護福祉士の資格取得では平均2〜3万円の給料アップが期待できます。実務者研修修了は平均1〜2万円の給料アップにつながる傾向です。認知症ケア専門士は、専門性の高い施設で優遇されます。介護支援専門員(ケアマネジャー)になれば月収5〜8万円アップの可能性があります。

喀痰吸引等研修は医療的ケア加算による収入アップが見込めるのが特徴です。サービス提供責任者になれる資格や介護予防運動指導員、ユニットリーダー研修修了なども収入アップにつながります。介護士の資格取得は一時的に時間や費用がかかりますが、長期的に見れば十分な投資価値があります。
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キャリアアップを目指す

介護業界には明確なキャリアパスがあり、スキルや役職に応じて収入が増える仕組みが整っています。介護業界での主なキャリアアップの選択肢は、以下のとおりです。

  • 介護福祉士
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • ユニットリーダー・主任
  • サービス提供責任者
  • 施設長
  • 認知症ケア専門士

管理職への昇進は、給料アップに直結します。一般の介護職員から主任やリーダーになると、役職手当が付くため月収が数万円上がる傾向です。施設長などの上位管理職になれば、年収が100万円以上アップする可能性もあります。

実務者研修や喀痰吸引等研修などを習得すると、業務範囲が広がるだけでなく、給与にも反映されます。社内研修講師や後輩指導者としての役割を担うことで、評価が上がり給料アップにつながる傾向です。

高収入の職場へ転職する

介護業界では施設の種類や地域によって給与水準に大きな差があるため、転職先選びが重要です。高収入が期待できる介護施設は以下のとおりです。

  • 有料老人ホーム(高級タイプ)
  • 介護付きマンション
  • リハビリ特化型施設
  • 大手介護チェーンの直営施設

高収入求人を見極める際は、基本給と各種手当の内訳や賞与の有無、昇給制度などを確認してください。職場の人員配置基準も給与に影響するため、人員が充実している施設は労働環境も良い可能性が高いです。

介護士の平均給料と他職種との比較

介護士の平均給料と多職種との比較を、以下の項目に分けて解説します。

  • 介護士の平均給料
  • 職場や資格・年代による違い
  • 多職種との比較

介護士の平均給料

介護士の平均月給は約26万円ですが、経験年数や保有資格、勤務する施設の種類によって大きく変わります。介護士として働き始めたばかりの場合、初任給は18〜22万円程度です。介護士の経験を積むにつれて給料は上昇し、10年以上のキャリアがあれば30万円前後まで上がる傾向が見られます。

勤務する施設によっても給料に差があり、特別養護老人ホームでは平均28万円程度、訪問介護では平均24万円程度です。介護士の平均月給は地域差も大きく、東京や神奈川、大阪などの都市部では、地方と比べて2〜4万円ほど給料が高い傾向です。

夜勤がある介護施設では、1回あたり4,000〜8,000円程度の夜勤手当が支給される場合が多くあります。

職場や資格・年代による違い

介護士の給料は、働く施設の種類や保有資格、年齢によって大きく変わります。介護士が働く施設種別による給料の違いは以下のとおりです。

施設種別平均的な月収水準
特別養護老人ホーム28万円前後
有料老人ホーム20万円前後
デイサービス19万円前後

資格の有無も給料に大きく影響します。介護福祉士資格保有者は無資格者より月額2〜3万円高く、実務者研修修了者は無資格者より月額1〜2万円高い傾向です。認知症ケア専門士などの専門資格で手当が付く場合もあります。

20代の介護士の月収は18〜20万円程度、30代の月収は21〜23万円程度、40代以上の月収は23〜25万円程度です。介護士の勤続年数による昇給は年間5,000〜1万円程度です。管理職(ユニットリーダーや主任)になると、一般職より月額3〜5万円高くなる傾向があります。

他職種との比較

介護士の給料を他職種と比較すると、全体的に低い水準にあることがわかります。看護師の平均年収は約450万円で、介護士(約320万円)より約130万円も高い傾向です。理学療法士・作業療法士の平均年収は約400万円で、介護士より約80万円高い給料が得られます。保育士は介護士とほぼ同水準の約320万円です。

一般的な職業の年収は以下のとおりです。

  • 公務員(地方公務員):約650万円
  • 建設作業員:約400万円
  • 一般事務職:約350万円
  • 調理師:約330万円
  • 小売業の販売員:約300万円
  • タクシードライバー:約300万円
  • 医療事務:約300万円

介護士の給料は公務員や建設作業員などと比べて低く、一般事務職と比べても低い傾向にあります。小売業の販売員やタクシードライバーや医療事務よりは若干高い水準です。

介護士の給料アップに関するよくある質問

介護士の給料アップに関するよくある質問は以下のとおりです。

  • パートやアルバイトは賃上げの対象?
  • 介護士の給料は今後も上がる?

パートやアルバイトは賃上げの対象?

介護業界のパートやアルバイトも、賃上げ対象になる傾向です。処遇改善加算は、雇用形態に関わらず、同一労働同一賃金の考え方にもとづいて配分されるためです。ただし、働く時間によって金額は変わる点に注意してください。

週40時間働く介護業界の正社員が1万円の賃上げなら、週20時間働くパートは5千円の賃上げになります。介護業界の賃上げ金額は職場によって異なるため、勤務先に確認しましょう。勤続年数や持っている資格によっても変わる場合があります。

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介護士の給料は今後も上がる?

介護士の給料は今後も上昇傾向が続くと予想されます。2024年の介護報酬改定では処遇改善加算が強化され、給料アップが期待できる状況です。政府も「新しい資本主義」の重点政策として介護職の処遇改善を掲げています。

2024年2月から賃上げが実施されていますが、一時的な賃上げではありません。介護士の昇給の背景には、深刻化する介護人材不足があります。人材確保のために給料アップの流れは継続する可能性が高いです。

少子高齢化による介護需要の増加も、介護士の価値を高め、給料上昇を後押しする要因となります。経済情勢や国の財政状況によっては、介護士の給料の上昇ペースが鈍化する可能性もある点に注意してください。

介護士として将来的な給料アップを確実にするには、資格取得やスキルアップを行い、自身の市場価値を高めることが重要です。

まとめ

介護士の給料は、2024年の介護報酬改定と政府の賃上げ政策により上昇傾向にあります。介護士の給料が上昇している背景には、深刻な人材不足と高齢化社会の社会的課題があります。介護報酬の上限設定や専門性の低い認知度が給料の低さの原因となっているのも事実です。

介護士として給料アップを目指すなら、夜勤を増やすことが有効な手段の一つです。夜勤手当の加算により、月収の大幅な増加が期待できます。介護士が資格を取得すれば、専門性が評価され、給料や基本給のアップが可能です。介護士としてパートやアルバイトとして働く場合も、賃上げ対象となる場合があります。

政府の政策と業界の変化を把握して、介護士としてのスキルアップを図りましょう。