雇用形態・資格・地域別に比較|介護士の平均年収と給料をアップさせる方法

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雇用形態・資格・地域別に比較|介護士の平均年収と給料をアップさせる方法

高齢化社会が進む日本では、介護士の需要が高まる一方、年収の低さが課題とされています。しかし労働環境の改善や資格の取得、スキルアップによって年収を増やすことは十分に可能です。

この記事では、介護士の年収を雇用形態や資格、地域別に比較し、年収アップの方法を詳しく解説します。記事を読めば、介護士としてのキャリアパスが明確になり、年収アップのための具体的な行動を決められます。まずは年収の実態を把握し、年収の目安を知りましょう。

介護士の年収の基礎知識

介護士の年収を知るには、業界全体の給与水準を知ることが第一歩です。年収に影響する要因を把握すれば、介護士の状況を客観的に理解できます。介護士の平均年収と手取り額の目安を詳しく見てみましょう。

介護士の平均年収

全国的に見ると、介護士の全国平均年収は約330〜350万円の範囲です。年収は経験年数や保有資格、雇用形態(正社員か非正規か)、勤務地、施設の規模、夜勤の有無によって変動します。経験年数10年以上や介護福祉士資格保有者は、年収が高くなる傾向です。正社員や都市部勤務、夜勤がある場合も高くなります。
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特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、比較的年収が高めです。経験5年未満の年収は約300万円、10年以上は400万円前後です。資格を取得すれば30〜50万円アップし、夜勤を含めると50〜100万円上乗せされます。しかし全産業平均(約440万円)よりは低い水準です。
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介護士の手取り額の目安

介護士の手取り額の目安を以下にまとめました。

年収手取り額(年額)手取り額(月額)
300万円約240万円約20万円
400万円約320万円約26.7万円

一般的に年収の約80%が手取り額の目安とされています。経験年数別による月額の手取り額は以下のとおりです。

経験年数手取り額(月額)
初任給約15〜18万円
5年以上約20〜22万円

経験年数に応じて、介護士の手取り額は上がる傾向です。夜勤手当や介護福祉士の資格により、月収が1〜3万円アップするケースもあります。地域格差も大きく、都市部と地方では、月5〜10万円程度違う場合もあります。
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介護士の年収比較

介護士の年収を以下の内容ごとに比較しました。

  • 雇用形態別の年収差
  • 資格保有による年収差
  • 地域別の年収差
  • 施設別の年収差

雇用形態別の年収差

介護士の年収は、以下のように雇用形態によって大きな差があります。

  • 正社員:350万円
  • 契約社員:280〜330万円
  • 派遣社員:220〜280万円
  • パート・アルバイト:180〜220万円

正社員は、福利厚生や賞与が充実しています。長期的な視点でも、正社員は昇給やキャリアアップの機会は多く、年収が上がりやすい環境です。一方、非正規雇用は勤続年数による昇給が少なく、年収の伸びは限られます。

資格保有による年収差

介護業界では、資格の有無が年収に大きな影響を与えます。介護福祉士の資格保有者は、無資格者と比べて月給で2〜3万円、年間で24〜36万円高くなります。実務者研修修了者は、無資格者より月給1〜2万円程度高い傾向です。
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大きな年収アップが見込めるのは、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格です。サービス提供責任者の資格は月3〜5万円、認定介護福祉士は月5,000〜10,000円の基本給加算があります。喀痰吸引等の医療的ケアに関する資格も、特定処遇改善加算の対象です。

資格取得は一時的な費用と時間がかかりますが、長期的に見れば年収アップにつながります。介護業界でキャリアを長く考えている人は、計画的な資格取得をおすすめします。

地域別の年収差

地域別の介護士の平均年収を以下にまとめました。

  • 関東地方:約350万円
  • 近畿地方:約340万円
  • 中部地方:約330万円
  • 北海道・東北地方:約320万円
  • 中国・四国地方:約310万円
  • 九州・沖縄地方:約300万円

東京23区では、地域手当として基本給に20%程度加算されます。しかし都市部の高い物価により、手取り額の実質価値は地方と同等になるケースがほとんどです。地方では、住宅手当や通勤手当が充実している場合もあります。働く地域を選ぶには、地域差を考えつつ、生活コストや働き方、キャリアパスを含めた総合的な判断が大切です。

施設別の年収差

施設別の介護士の年収は以下のとおりです。

  • デイサービス:290〜330万円
  • グループホーム:300〜340万円
  • 訪問介護:280〜320万円
  • 特別養護老人ホーム:310〜350万円
  • 有料老人ホーム:320〜380万円
  • 障害者支援施設:330〜380万円
  • 介護付きマンション:330〜390万円
  • 地域包括支援センター:350〜420万円

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医療と関連する施設では、比較的年収が高い傾向です。専門性の高い障害者支援施設や、高度な能力が評価される相談業務は、高い年収が期待できます。施設選びは勤務体制や仕事内容との相性も重要です。夜勤の有無や業務の専門性、キャリアプランに合わせた選択を検討しましょう。
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介護士の年収を上げる方法

介護士はスキルアップや働き方の工夫によって年収を上げることが可能です。介護士の年収を上げる方法は以下のとおりです。

  • 資格を取得する
  • 管理職を目指す
  • 夜勤を増やす
  • 給与の高い施設へ転職する

複数の方法を組み合わせるとさらに年収アップが期待できます。

資格を取得する

介護士の年収を上げるおすすめの方法は、専門資格の取得です。実務者研修を修了するだけでも、月に5,000〜10,000円の手当が付く施設が多くあります。介護福祉士の資格を取得すると、月1〜3万円アップするのが一般的です。

専門性の高い認知症ケア専門士やケアマネジャーの資格もおすすめです。喀痰吸引等研修を受ければ手当が付く施設も増え、サービス提供責任者の資格を取れば、役職手当が加算される場合もあります。複数の資格を組み合わせて取得すると、相乗効果も期待できます。

介護職員処遇改善加算の制度では、資格保有者は給与上乗せの対象となる場合が一般的です。資格取得は時間と費用がかかりますが、長期的に見れば確実に年収アップにつながる投資です。

管理職を目指す

管理職になると基本給が増加するだけでなく、管理職手当も月に5,000〜30,000円程度加算される可能性があります。介護主任は年収が30〜50万円程度アップし、施設長クラスになると年収600〜700万円に達する可能性も期待できます。

一般的には、介護職員からリーダー、主任・課長を経て施設長になるのが昇進ルートです。介護福祉士などの資格取得が前提条件となり、3〜5年以上の実務経験や管理職研修の受講が求められます。

キャリアアップを目指すなら、マネジメント力やコミュニケーション能力、問題解決能力のスキルを磨くことが大切です。転職を検討する場合は、管理職の給与体系が整った大手介護施設も視野に入れましょう。
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夜勤を増やす

年収アップを目指すなら、夜勤専門の求人や夜勤比率の高い施設を探すことが効果的です。夜勤では、通常日勤の1.5〜2倍の時給が設定され、月に4〜8回の夜勤で月収が3〜6万円増加する可能性があります。夜勤専従の場合、通常より20〜30%高い給与設定の施設が多く、手当が非課税となるケースもあり税制面でも有利です。
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ただし働きすぎを防ぐため、労働基準法や施設の規定によって夜勤の回数には上限が定められています。夜勤は生活リズムが乱れやすく、健康リスクにも注意が必要です。

給与の高い施設へ転職する

介護士の年収アップには、給与が高い以下の施設への転職もおすすめします。

  • 大手介護チェーン(経営基盤が安定)
  • 有料老人ホーム
  • 医療介護施設(病院附属・療養型)
  • 介護福祉施設
  • 都市部の施設(人件費相場が高い)

介護士の転職活動では、複数の求人を比較しましょう。転職エージェントを活用すれば非公開求人の情報も得られます。転職前に介護福祉士などの資格を取得しておくと、好条件で転職できる可能性が高まります。応募先の離職率や残業状況、昇給・賞与制度を事前に確認し、長く働ける環境かどうかをチェックしてください。
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介護士の年収推移と将来の年収予測

介護士の年収は、過去10年で着実に上昇しています。過去から現在、将来の年収予測について解説します。

過去の年収推移

介護士の年収は過去10年にわたって、緩やかに上昇してきました。以下は、年収がどのように変化してきたのかまとめたものです。

  • 2010年:約320万円
  • 2013年:約330万円
  • 2015年:約335万円
  • 2017年:約345万円
  • 2019年:約355万円
  • 2021年:約365万円
  • 2022年:約370万円
  • 2023年:約380万円

2015年の介護報酬改定時には、一時的に伸び悩みも見られました。しかし2019年以降は、特定処遇改善加算の導入やコロナ禍での特例手当などにより、年収の上昇ペースが加速しました。

現在の年収推移

2024年時点での介護士の平均年収は約371万円です。2024年6月、国の新しい処遇改善加算が始まりました。従来の3つの加算(介護職員処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算)が一本化されます。新制度により、介護事業所は賃金改善に柔軟に取り組めるようになりました。

国は、介護職員の賃金を2024年度に2.5%、2025年度に2.0%引き上げることを目指しています。月給ベースで年間約10万円の年収増が見込める計算です。新制度を活用する事業所では、介護福祉士や経験豊富なリーダーの給料が以前よりも上がりやすくなることが期待されます。
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将来の年収予測

今後も介護士の年収は上昇傾向が続くと予測されています。国の処遇改善加算の効果で、今後5年で年収が3%増加する見込みです。2025年問題による介護需要の増加と人材不足も、給与水準を押し上げる要因です。

介護福祉士の資格を持つ人は、2030年までに年収400万円台、管理職なら年収500万円以上も期待できます。デジタル化による業務効率化や、在宅介護など専門性の高い分野での需要増も年収アップを後押しします。ただし国の政策変更によって、予測は変動する可能性があるため注意が必要です。

介護士の年収に関するよくある質問

介護士の年収に関するよくある質問を以下にまとめました。

  • 介護士の年収が低い理由は?
  • 介護士のボーナスの実態は?
  • 介護士の年収は他国と比べて低い?

介護士の年収が低い理由は?

介護士の年収が低い理由は、介護保険制度によるサービス価格の上限設定にあります。国の制度で報酬単価が決まっているため、施設側は自由に価格を設定できず、年収の引き上げが難しい構造です。

多くの介護施設は中小規模で経営基盤が弱く、人件費に十分な予算を割けません。24時間体制による人員配置の必要性や、非正規雇用の多さも介護士の年収が低い要因です。介護の重要性は高まっているものの、十分な社会的評価を受けていない部分もあります。キャリアパスや昇給制度の不足も、年収が伸び悩む要因となっています。

介護士のボーナスの実態は?

介護士のボーナスは、年間1.5〜3か月分が平均的な水準ですが施設によって大きく異なります。大手チェーンや公共施設では3〜4か月分が支給される一方、小規模施設では0.5〜1か月程度や支給がない場合もあります。

ボーナスの支給額は雇用形態や保有資格、勤続年数、夜勤の有無などに左右され、正社員は非正規より高額となる傾向です。近年は処遇改善加算により改善傾向にあり、業績連動型ボーナスを導入する施設も増えています。ボーナスは基本給に連動するため、基本給の高い施設を選ぶことが、年収アップの近道です。

介護士の年収は他国と比べて低い?

日本の介護士の年収は、国際的に見ると高くありません。日本を含めた欧米諸国の介護士の平均年収は、以下のとおりです。

  • 日本:約350万円
  • ドイツ:約500万円
  • アメリカ:約450〜600万円
  • イギリス:約400万円
  • 北欧諸国:600〜700万円

年収格差の主な理由は、海外では介護が専門職として高く評価されている点と、日本の介護保険制度による報酬上限の存在です。諸外国では高い資格要件と教育水準に見合った報酬体系が整備されています。

日本の介護士の年収が低い理由には、労働環境の違いも影響しています。日本は人手不足による労働負担の大きさが課題です。生活コストの違いを考慮しても、日本の介護士の給料は海外に比べて低水準であると言えます。
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まとめ

介護士の年収は平均で330〜350万円程度ですが、雇用形態や資格の有無、地域、施設の種類によって大きく変わります。年収をアップさせるには、資格を取得したり夜勤などの働き方を変えたり、待遇の良い施設へ転職したりする方法が効果的です。

介護業界の給与は介護報酬改定に伴い緩やかな上昇傾向にありますが、他の業種と比べるとまだ低い水準です。しかし政府による処遇改善加算などの施策により、将来的には年収アップが期待できます。今後は、仕事の価値に見合った報酬体系への移行が期待されます。

今後の介護業界の成長に合わせてスキルを磨き、より良い待遇を目指してキャリアアップしましょう。
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