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高齢化社会に伴い、介護の知識や技術の重要性が高まっています。しかし、介護に関する基本的な考え方や実践方法の知識がない人も多くいます。この記事では、介護の基本知識や実践的な技術、介護を安全に行うためのポイントをまとめました。
記事を読めば、実際の介護現場で活かせる基本技術を身に付けられます。介護の本質は単なる身体的なサポートではなく、利用者の尊厳を守り、自立を支援することです。適切な知識と技術を身に付けると、利用者のQOLを向上させる質の高い介護を提供できます。
介護の基本知識

介護の基礎知識を、以下の項目に分けて解説します。
- 介護の目的
- 介護の歴史と制度
- 介護と福祉の違い
介護の目的
介護は、介護を受ける人が自分らしく生きられるように支援する役割があります。介護の目的は以下のとおりです。
- 利用者の自立支援
- 生活の質の向上
- 日常生活動作の維持・改善
- 苦痛の緩和
- 尊厳と個性の尊重
- 社会的つながりの維持
介護を必要とする人だけでなく、家族の介護負担の軽減も重要な目的の一つです。家族が疲れ切ってしまわないよう、利用者と家族の両方が安心して生活できる環境づくりが必要です。
介護の歴史と制度

日本の介護制度は、高齢化社会の進展とともに大きく変化しています。介護の歴史は1963年の老人福祉法制定から始まっています。1973年には老人医療費無料化制度が導入され、高齢者の医療へのアクセスが向上しました。
しかし、医療費の増大に伴って1982年には老人保健法が制定され、高齢者にも一部負担が導入されています。1989年には高齢化社会に対応するための計画として「ゴールドプラン」が策定されました。ゴールドプランは特別養護老人ホームの整備やホームヘルパーの増員、デイサービスセンターの充実が目的です。
1994年にはさらに発展した「新ゴールドプラン」が策定され、在宅サービスの充実が図られています。日本の介護制度の大きな転換点は、1997年に成立した介護保険法です。従来の措置制度から、利用者が自らサービスを選択する契約制度へと変わりました。
介護保険制度では40歳以上の国民が保険料を負担し、要介護認定を受けた人がサービスを利用できる仕組みに変化しました。2005年には予防重視型システムへの転換が図られ、2011年からは地域包括ケアシステムの構築が進められています。
2014年には医療介護総合確保推進法が成立し、地域での包括的なケア体制の強化が図られました。近年では2018年から地域共生社会の実現に向けた制度改革が進んでいます。現在は、2025年問題(団塊の世代が後期高齢者となる時期)への対応が急がれています。
介護と福祉の違い
介護と福祉には、明確な違いがあります。介護は個人に対する直接的な支援行為であり、福祉はより広い社会的な概念です。介護とは、日常生活の支援や身体的・精神的ケアを提供する具体的なサービス行為を指します。介護は、介護保険制度にもとづくサービスが中心であり、介護福祉士などの専門職が担当します。
福祉は、社会全体の幸福や生活の質の向上を目指す広い概念です。すべての人を対象としており、社会的弱者の権利保障や社会参加の促進が主な目的です。福祉は、社会福祉法など幅広い法体系にもとづいており、財源も税金や助成金から成り立っています。
介護の基本的な考え方

介護の基本的な考え方を以下で解説します。
- 自立支援を重視する
- 利用者の尊厳とプライバシーを守る
- QOLの向上を目指す
自立支援を重視する
介護において自立支援を重視することは、利用者の尊厳ある生活を守るために大切な考え方です。具体的な自立支援の方法は以下のとおりです。
- 日常生活動作(ADL)の自立度評価
- 自己決定の尊重
- 自信と意欲を引き出す声かけ
- リハビリ専門職との連携
介護者は「手を出しすぎない」ことの大切さを理解する必要があります。利用者の可能性を最大限に引き出す支援の心がけが重要です。
利用者の尊厳とプライバシーを守る

利用者の尊厳とプライバシーを守ることは、質の高い介護サービスに欠かせません。尊厳とプライバシーの保護には、以下の配慮が必要です。
- 個人情報の厳重管理
- 入浴・排泄介助時の配慮
- 居室訪問時のノックと声かけ
- 個人所有物の尊重
- 情報共有時の同意確認
身体拘束や虐待などの不適切なケアは、利用者の尊厳を著しく傷つける行為です。不適切なケアを防止するための知識と意識を持ち、利用者の立場に立ったケアを心がけましょう。
QOLの向上を目指す
介護サービスの重要な目標の一つが、利用者のQOL(Quality Of Life)の向上です。QOLとは単に健康状態だけでなく、自分らしい充実した生活に関する総合的な満足度を指します。QOL向上のために利用者の個性や価値観を尊重し、自己決定の機会を確保してください。
身体的・精神的な健康を保ちつつ、社会とのつながりを維持させましょう。介護の現場では、画一的なサービスではなく、一人ひとりの生活習慣や好みに合わせた個別ケアが重要です。利用者の環境面での配慮も欠かせません。住環境の整備や適切な福祉用具の活用により、利用者の日常生活の質を高められます。
介護の三原則

介護を行ううえでの三原則を以下で解説します。
- 生活の継続性
- 自己決定の原則
- 残存能力の活用
生活の継続性
生活の継続性は、介護において大切な原則の一つです。利用者が送ってきた生活習慣や環境をできる限り維持することで、心身の安定を図れます。以下の点への配慮が重要です。
- 食事の時間や内容
- 起床・就寝時間などの生活リズム
- 長年続けてきた趣味や社会活動
- 家族や友人との関係性
住み慣れた地域での生活を継続できるように支援することも、生活の継続性を保つうえで欠かせません。生活の継続性を重視すると、利用者は安心して日々の生活を送れるため、心身の健康維持にもつながります。
自己決定の原則

自己決定の原則とは、利用者が自分の生活やケアについて、自分自身で決める権利を大切にする考え方です。介護者は「何をしてあげるか」ではなく「どう支援するか」という姿勢が求められます。選択肢や情報の提示、決定のための環境整備、意思を尊重する姿勢が重要です。
認知症の人や意思疎通が難しい場合でも、表情や反応から気持ちを読み取る努力が必要です。自己決定を尊重すると、利用者の自尊心が保たれ、生きがいを感じられるようになります。反対に、過度な保護や管理は依存心を高め、自立する力を奪う危険性があります。
介護保険法や障害者総合支援法などの制度でも、自己決定の原則は重要です。利用者自身が選び決めることを支援する姿勢は、利用者の充実感につながります。
残存能力の活用
残存能力とは、利用者が現在も持っている能力や機能を指します。介護において、利用者ができることを奪わない姿勢が大切です。できる部分は自分で行ってもらうことで、利用者の能力を維持できます。
「できること」と「できないこと」を正確に見極め、少し時間がかかっても自分でできることは見守りましょう。過剰な介護を避けて必要な支援だけを提供することが重要です。介護者が過剰に介助すると、利用者は自分でできることを奪われ、自信を失い、生活への意欲も減退してしまいます。
リハビリテーション専門職と連携しながら能力の維持・向上を目指すことも効果的です。利用者の意欲を引き出す声かけや環境づくりも、残存能力を活用するための重要な要素です。
介護の基本技術

介護の基本技術について以下で解説します。
- ボディメカニクスの原則
- 基本的な介護技術
ボディメカニクスの原則
ボディメカニクスとは、体の効率的な動かし方や正しい姿勢の取り方です。ボディメカニクスの原則は以下のとおりです。
- 重心を低くする
- 支持基底面を広くとる
- 対象者に近づく
- てこの原理を活用する
- 大きな筋群を使う
- 対象者の身体を小さくまとめる
- 水平移動を行う
- 引く動作を活用する
ボディメカニクスの原則を日常の介護業務に取り入れると、介護者は長く健康的に介護の仕事を続けられます。
基本的な介護技術
基本的な介護技術は、介護を行ううえで必要なスキルです。適切な介護技術を身に付けると、利用者の安全と快適さを確保できます。介護の現場では、以下の技術が求められます。
- 移動介助
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 衣類の着脱介助
コミュニケーション技術や口腔ケア、バイタルサイン測定や体位変換など、多岐にわたる技術が求められます。転倒や誤嚥、急変時などの緊急時の適切な対応方法も学びましょう。正確な観察と記録の取り方は、利用者の変化を見逃さず、チームで情報共有するために必要な技術です。
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安全な介護を行うための基本ポイント

介護を安全に行うための基本的なポイントを以下にまとめました。
- 身体介助の基本を守る
- 環境を整える
- 利用者との信頼関係を築く
身体介助の基本を守る
身体介助を行う際には、基本の正しい手順や方法を守ることが重要です。身体介助の基本は、利用者の状態や能力の正確な把握です。介助前には声かけを行い、行う動作の説明と同意を得ましょう。介助する際の姿勢や動作に関して、以下を意識してください。
- 腰を低く保つ
- 大きな筋肉を使う
- ゆっくりと安定して動く
- 自然な動きを妨げない
- てこの原理を活用する
利用者の残存能力を活かすことも重要です。利用者が動きやすい位置に立ち、両手を使って安定した支えを提供してください。介助中は利用者の表情や反応に注意を払いましょう。痛みや不快感がないかを確認しながら慎重に介助を行ってください。福祉用具の活用や、二人介助を行う場合もあります。
身体介助の基本を守ることは、利用者だけでなく、介護者自身の安全にもつながります。正しい知識と技術を身に付け、安全で効果的な介護を提供しましょう。
環境を整える

安全で快適な介護を提供するためには、適切な環境整備が重要です。介護を行う環境は、利用者の安全と尊厳に直接影響します。介護を行う部屋の温度や湿度、照明は利用者の快適性を左右する要素です。介護者は、季節に応じた室温調整を行い、夏は熱中症予防、冬は低体温症予防に配慮してください。
照明は適切な明るさを保ちましょう。転倒事故を防ぐために、以下の対策が効果的です。
- 床に散らかったコード類や障害物を片付ける
- 手すりを設置する
- 滑り止めマットを敷く
- 通路の幅を確保する
ベッドや車いすは、利用者の身体状況に合わせて高さを調整しましょう。利用者のプライバシーを守るための配慮も重要です。環境整備は、利用者の安全確保だけでなく、介護者の負担軽減にもつながります。
利用者との信頼関係を築く
利用者との信頼関係は、安全で効果的な介護を行うための基盤です。利用者との信頼関係を築くためには、コミュニケーションや傾聴を意識しましょう。利用者との約束を守ったり、個人を尊重したりすることも重要です。日々の関わりの中で、笑顔や穏やかな態度を意識してください。
介護者は、プライバシーに配慮した言動を心がけ、情報を適切に共有しましょう。ケアの方針や目的をわかりやすく説明し、利用者が安心してケアを受けられる環境づくりに努めてください。定期的な状況確認と声かけを行いながら、信頼関係の構築を心がけましょう。
介護職の基本の資格と研修

介護職の基本的な資格と研修について、以下で解説します。
- 介護福祉士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 介護職員初任者研修
介護福祉士
介護福祉士は、介護の専門職の代表的な国家資格です。介護福祉士の資格を取得するには、以下の3つの方法があります。
- 養成施設ルート
- 実務経験ルート
- 福祉系高校ルート
国家試験は年に1回実施され、内容は筆記試験のみです。合格率は例年70〜80%程度で推移しているため、適切に準備しましょう。介護福祉士の業務範囲は幅広く、身体介護や生活援助のほか、利用者や家族への相談・助言なども含まれます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護が必要な人や家族の強い味方になる専門職です。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、要介護者からの相談に応じ、個人に合った介護サービス計画(ケアプラン)を作成する役割があります。
介護支援専門員になるには、保健や医療、福祉分野の国家資格を有し、5年以上の実務経験であることが求められます。都道府県が実施する介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修の修了も必要です。
介護支援専門員は、資格を取得したら終わりではなく、5年ごとに更新研修を受講する義務もあります。アセスメントやケアプランの作成、介護サービスの調整が介護支援専門員の主な業務です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、モニタリングや給付管理も行います。利用者や家族との信頼関係を築きながら、多職種と連携してケアを進めるコーディネーターの役割も担っています。
» 介護業界の主な職種を施設や形態別に解説
» ケアマネージャーの仕事内容を紹介!
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の仕事を始めるための入門的な資格です。介護職員初任者研修では、介護の基礎知識と実践的な技術を身に付けられます。介護職員初任者研修を受講するための条件は特にありません。年齢や性別、学歴などの制限がないので、介護に興味がある人なら誰でも挑戦可能です。
介護職員初任者研修は全部で130時間あり、講義と実技の両方を学びます。修了後には試験があり、合格すると修了証明書がもらえます。主な学習内容は以下のとおりです。
- 介護の基本理念
- コミュニケーション技術
- 高齢者・障害者の理解
- 認知症ケア
- 生活支援技術
介護職員初任者研修費用は5〜10万円程度かかりますが、自治体や介護事業所によっては助成金制度を利用できる場合もあります。研修を修了すると、特別養護老人ホームやデイサービス、訪問介護などさまざまな介護の現場で働けます。介護職のキャリアパスでは、初任者研修が第一段階です。
まとめ

介護は利用者の尊厳を守りながら自立を支援する大切な活動です。介護の三原則である「生活の継続性」「自己決定」「残存能力の活用」を意識することが質の高いケアの基盤です。原則を守ると、利用者の個性や生活習慣を尊重したサポートができます。
介護福祉士やケアマネジャーなどの専門資格を取得すると、より専門的な知識と技術を身に付けられます。継続的な学習と研修で知識を身に付け、利用者のQOL向上を意識した介護を提供しましょう。